⑽薬が決まるまで
再度精神科を訪れた私に、医師は開口一発、こう言った。
「池内の方から連絡が届きました。あなたは私の患者さんです。そこでまず確認しておきたいのは、あなたに転地療養する気があるかどうかということです。つまり離婚するつもりがおありかということなんです」
私は即答した。
「ありません!」
婚家は多少資産があった。
弁護士に調べてもらっていたが、私が娘たちの親権を取る事は非常に難しいと言うことだった。
私の実家と婚家では経済的な格差が大きすぎたのだ。
娘たちを失わないためには、私は今いる場所で頑張るしかなかった。
医師はっこり笑ってこういった。
「では今いる場所で頑張って治療しましょう!」
早速投薬が始まったが、私に合う薬を決めるまで時間がかかった。
最初は1週間おきに通院をした。
薬のマッチングを調べるための通院だった。
ようやく私に合う薬が見つかったのは、最初の投薬から3ヶ月ほどのちのことだった。
私は毎日、自分の体調を観察していた。
その間、私は病院の行き帰り、タクシーを使っていた。
発作は相変わらず頻繁に起こっていた。
いつもタクシーを使用する私に、ある時運転士さんが言った。
「たまには歩きやったらどうですか」
それができないからタクシーをお願いしてるのだ。
その時の運転さんの言葉は今でも心に突き刺さっている。