⑹自宅に戻って
ようやく点滴から解放されて喜んだのもつかの間、私は絶え間なく襲ってくるめまい、動悸、過呼吸に悩まされた。
怖くて外出ができない。
着替えることもお風呂に入ることも怖い。
私は何日も同じジャージ上下で過ごした。
しかし、中学生の娘が二人いた。
何とかしなければ、と焦った。
でも、自宅から100メートルほど離れた飲料水の自動販売機まで歩くことができないありさま。
食糧は姑が買ってきてくれるのだが、ガスコンロの前に立って調理するのが怖い。
娘たちにはちゃんと食べさせてやりたい。
考えて、考えて私は昔使っていた電熱器を探した。幸いに、使える状態だった。
これなら、しゃがんで火を使うことができる。
鍋に覆いかぶさるように調理している私を見て、娘たちは、
「お母さんが魔女のシチューを作っている!」
と冷やかしていた。